こゆび手帖

山と毎日とあんなこんな。

一番嫌いな部分が私は一番好き。


嫌だったことも
辛かったことも
悲しかったことも
嬉しかったことも
楽しかったことも


その時の感情をいつまでたっても忘れずにいて
その時にタイムスリップしたかのように話す。


どんな感情も、生々しく忘れられずに覚えているんだろう。


「辛い」や、「悲しい」は忘れてしまえたら楽だと思う。
それをいつまでも忘れられないのはしんどいだろうと思う。
そんな部分が自分は一番嫌いだと言うけど、
それら全部があって今の彼は形成されているのだと思う。


私は彼が大好きで、特に「忘れることができない」部分が好き。



もし万が一、彼とお別れするようなことがあったとしたら
きっと私も彼の記憶の中に刻み込まれて
生々しく思い出されることがあるのだろう。


だとすれば、私はずっと笑顔で居よう。



立山4泊5日~その3~

とりあえず室堂まで降りてきた。
亀の歩みでストックを付き、道を譲りつつ。


これ以上悪化させるわけにはいかない。
でもなるべく早く歩きたい。
でも、ほんの少しの傾斜でも飛び上がるほど足が痛む。


足を引きずりながら歩く私に、すれ違う人に「痛み止めあるので出しましょうか?」
など人の温かさを感じるような事もあり。


一の越山荘でも、スタッフの方には随分と親切にしていただきました。


普段都会で生活していると、人との関わり合いが煩わしいと思ったりしていたのに。
一人ではやっぱり生きていけないんだな・・なんて思ったり。



降りてきて、さてどうするか・・と言うことになり
せっかく立山まで来たのだから温泉付きの山荘に泊まり翌日は黒部ダム観光でもしようかという事に。


そして立山室堂山荘へ。


一の越では彼と二人だけの部屋だったけど、
こちらでは老夫婦と相部屋でした。



仲の良さそうな御夫婦で、お年もかなり召していたような気がしますが
私から見れば共通の趣味があり、この年齢でも一緒に立山の雄山に登りに来るなんて
羨ましい限り。


翌朝旦那様の方は体調が優れないらしく、
奥様だけが雄山に登ってくるとおっしゃって、部屋を出ていかれました。



私も彼とこんな年齢になるまで仲睦まじく登山に来れたらいいなぁなんて思いながら。


翌朝早朝、山荘の外に出て山の稜線を彼と眺めた。


本当なら今頃あの稜線に立っていたかもしれないのにごめんなさい。
あの稜線から、ご来光を見たかったなぁ。
悔しい思いを口にすることもない彼は優しい。


足の痛みはだいぶマシになり、黒部ダム観光へ。


続く。



立山4泊5日~その2~

お天気も良くて、今回の稜線歩きは本当に楽しみにしていました。
天国にいるような美しい風景と、大好きな彼と一緒に共有できる。と。



登りの途中はいつもより増して、体調不良もありしんどかったけど
あの絶景が待ってる!と思うとなんとか頑張ることができたのです。



浄土山登頂、そして雄山登頂、大汝山登頂、



その後です。
富士ノ折立へ向かう道中、足を捻挫・・・・。



今日はいつもより体調が悪いから、充分気をつけて歩いていたのに。


時間的にもこの先すぐには山荘は無いし、ガスってきてるし危険だから戻ろうという事に。
戻りたくは無かったけど、ここでわがままを言って万が一の事が起きては大変。
大人しく彼の言うとおりに来た道をリバース。


でも、足が腫れあがり、痛くて痛くて歩けない。
既に午後でガスっていたので少し寒い。
いつものペースで歩けるならまだ体も温まるけど、こんなペースでは体は冷える一方。
そこからは彼がテーピングをしてくれ、私のザックを持ってくれた。


一言も私を責めるような事や小言を言わず、終始
「大丈夫か?」「痛くないか?」などと励ましてくれました。


そんな時に思い出したのが昔何かで読んだ一節。


「大好きな彼を見極める方法として、登山に行ってみましょう。」と。
でも最優先であなたの事を気にかけてくれるような人ならきっと大丈夫だと。
そんなような事が書いてありました。



登山は正直しんどい。
そのしんどさを乗り越えた先にあるご褒美の絶景を励みに頑張って登るのです。
その風景は都会にあるどんな高層ビルの屋上からでも見れない天国にいるかのような風景です。
自分の中の苦悩などちっぽけにすら思える程、神々しい風景に出会える。


まとまった休みなど年に1回か2回くらいしか取れない貴重な時間に
早々に下山する羽目になってしまった事に申し訳なく思い
また、日がとっぷり暮れて一番近い一の越山荘に着いた時は、笑顔で
『よく頑張ったね。』と声をかけ頭を撫でてくれた彼に
やっぱり私はこの人が大好きだ。と思った。


今回の縦走は天気予報でも晴天に恵まれることが分かっていたので
彼も本当に楽しみにしていたのです。
それなのに早々にこんなトラブルに巻き込んでしまって、自分自身自己嫌悪に陥りました。


テント泊の予定だったのが急遽山荘泊に。
テントの撤収も、テントに置いてきた重たい私と彼のザックも
翌朝早々に彼一人がやってくれ、また私を迎えに一の越山荘まで汗だくで戻ってきてくれた。



予定が狂いに狂ってしまったけど
彼の優しさや、逞しさを感じた出来事でした。


続く。